雁(がん、かり)三題
◆秋の雁行(がんこう)
雁(がん)は、万葉集を始め古典でよく詠まれている、秋を代表する鳥です。たくさんでVの字やカギのようなかたちで飛ぶ雁行(がんこう)は、湖沼や水田のある飛来地では今もよく見られます。
◆「落雁(らくがん)」はネグラ入りするさま
雁は国の天然記念物で、早起きの鳥です。寝るのも早く、
日没前後にはネグラに向かって一斉に空から舞い降りてきます。その勢いの良さはまさに「落雁」。
◆良き家庭婦人の名は「雲居の雁(くもいのかり)」
雁は、家族間で鳴き声をかわし、無事を確認しながら飛びます。一生同じつがいで暮らし、雌雄同色。家族の仲も夫婦の仲も良く、男女同権!?ということですね。
光源氏の長男「夕霧」の妻は、子沢山の良き家庭婦人で、名は「雲居の雁」。
少女時代に離れている夕霧を想って詠んだ歌に、「雲つまり霧の中を飛ぶ雁」が出てくることから名付けられました。しかし雁は「家庭的」ということからも、ぴったりな名前なのではないでしょうか。
※源氏物語は来年2008年が千年紀。落雁丸棗は記念の茶器としてもおすすめです。
※「かり」と「がん」
(古い)短歌では「かり」。室町時代から「がん」という読みが現れ、現代では「がん」が正式。俳句や現代の小説などでは「がん」と読むことが多いようです。
とはいうものの、最近のヒット曲の歌詞には、先にあげた万葉集の歌と同じように「渡る雁がね(かりがね)・・」という表現があります。「かり」という読みは、日本人の心の奥にしっかりと
根づいているようです。
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