茶道具の裂で「東山」とは、東山殿と呼ばれた足利義政が所持したもの、
あるいは明に注文させて作らせたことに由来するものをいいます。
出し袱紗の趣を楽しみつつ、時には茶道の歴史をひもとくのも面白いかもしれません。
さて実際には、「東山裂」と称する唐草文様には、下記の二つがよく見られます。
1 金襴(本歌)と紹巴の東山裂
ご紹介の紹巴出し袱紗の意匠配置は、東京国立博物館にある
「名物裂東山裂(白地二重蔓花唐草模様金襴)」を思わせます。
ゆったりと二重蔓唐草を織出し、ツルの先には牡丹や菊に似た
四種の花や葉を添えたもの。自然の草花を唐草へたくみに取り込んでいます。
※一般に「東山金襴」とは、金糸で一重、または二重の牡丹唐草を織り出したもので、
地色や唐草の意匠の違いがあり、別称や異なる由来をもつものもあります。
たとえば白地に二重唐草の東山裂は「本願寺金襴」と呼ばれます。
2 緞子の東山裂
織りが緞子の「東山裂」では、空間が少なく、
一重の唐草と宝尽しの意匠がびっしりと詰まった吉祥文様となります。
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