■歴史の中の不動明王
ご紹介の袱紗には牛に乗った不動明王が織り出されています。
言い伝えでは修験道の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)が
山奥での修行中に、牛に乗った不動明王と出会います。
不動明王は修験道で修行をする山伏の守り本尊となりました。
現在の不動明王の像は、ほとんどが岩(盤石な信仰心を表す)の上ですが
その様相は言い伝えと同じ、鬼のような「憤怒」。
実はこれは優しさの極致が怒りとなったもので、
たとえば背の火焔は、一切の煩悩を焼き尽す大慈悲の火なのです。
■身近な不動明王
本尊が不動明王の成田山では、節分に「鬼は外」と言わず「福は内」とだけ言うそうです。
鬼のような姿でも不動明王にはそばにいてもらいたい、
煩悩から救って欲しい、と願う人びとの気持ちに答えてのものでしょう。
今年2013年の節分で、成田山と深いつながりをもつ歌舞伎俳優が
豆まきしたというニュースを見聞きされたでしょうか。
この歌舞伎俳優は代々「にらみ」というお家芸が有名です。
江戸時代、二代目市川團十郎の「不動の見得」が人気を集め、
「不動の見得」でにらまれると病が治ると噂されたことがあったとか。
さてご紹介の袱紗の不動明王はどんな眼をしているでしょうか。
袱紗を手にした時、キラリと光るのは糸なのか、それとも・・。
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